米領事館建設で外国人不当労働 時給2ドル未満のミラノの現場

ミラノ、イタリア、6月12日 (AP) ー イタリアのミラノで進められている総工費3億5000万ドル(約525億円)の巨大な米国総領事館の建設現場で、外国人労働者らが公正な賃金を約束されながらも、実際には時給2ドル(約300円)未満で働かされていたことが明らかになった。AP通信が元従業員5人へのインタビューや、雇用契約書、給与明細を精査した結果判明した。 イタリアの検察当局は、米国の外交公館建設を数多く手がけるアラバマ州モンゴメリー拠点の建設大手キャデル・コンストラクションに対する捜査を開始した。検察によると、今月に入り、イタリア国内にいた同社のマネージャー2人が労働搾取の疑いで逮捕された。うち1人は出国便に搭乗する直前で、もう1人も逃亡を企てていたという。 捜査を指揮するのはパオロ・ストラーリ検事。同検事はこれまでにも、高級ブランドに製品を供給するスウェットショップ(搾取工場)の摘発を主導してきた。現時点で捜査対象として名前が挙がっているのはキャデル社のみで、下請け業者は含まれていない。 この領事館を巡る捜査は約半年前に開始され、インド出身者を中心とする約70人の労働者が関わっている。検察の主張によると、キャデル社は賃金から宿舎代や食費を不正に差し引き、労働者らに1日10時間、週6日の勤務を強要していたという。中には、宿舎代などが差し引かれた結果、月給がわずか500ユーロ(約580ドル未満/約8万7000円未満)にまで落ち込んでいたケースもあった。 キャデル社と米国国務省は、これらの疑惑について調査を進めており、イタリア当局に全面協力していると発表した。 この領事館プロジェクトは、過去20年間にわたって続くミラノの建設ブームの一環であり、この間に同市のスカイラインは近代化され、イタリアのファッションと金融の中心地としての国際的な存在感も高まった。 AP通信は、労働組合の拠点で法律相談や住居確保などの支援を受けていたケニア出身の労働者4人とインド出身の労働者1人に取材した。労働者らは報復への恐れや、進行中の捜査への影響を考慮し、匿名を条件に当時の書類を提供して証言に応じた。 ケニア人の労働者らによると、彼らはナイロビにある米大使館の数百万ドル規模の拡張工事に従事した後、キャデル社に雇われたという。うち2人が提示したキャデル社の便箋に書かれた雇用契約書には、会社の代表者の署名とともに、2万5000ユーロ(約2万9000ドル/約435万円)を超える年収が約束されていた。 しかし、実際の支給額はそれに遠く及ばず、現場の経営陣に疑問を呈したところ、人事担当者から脅迫を受けたと証言している。あるケニア人の電気技師は、イタリアの労働法のAI要約を提示したところ、名誉毀損で訴えると脅され、契約書にある2万5000ユーロの記載は「ビザ申請のためのもの」であり、支払いの約束ではないと告げられたという。 米国国務省は、検察当局の告発内容を調査中であり、米国の法執行機関がイタリア当局と連携しているとした上で、「米国政府は労働搾取を容認しない」との声明を出した。 一方、キャデル社はイタリア当局に「全面的に協力している」とし、すべてのグローバル下請け業者やコンサルタント会社が労働基準と法的要件を遵守しているかを確認するため、自社でも「包括的な調査」を行っていると述べた。同社は声明で「キャデルは労働者を公正に扱い、公正な賃金を支払うことに尽力している。この重要なプロジェクトに従事する人々の福祉を確保するため、今後も誠意を持って当局と協力していく」とした。 なお、キャデル社は10年以上前にも、政府の優遇措置を受けるために虚偽の主張を行ったという疑惑を巡り、米政府に数百万ドル(数億円規模)を支払って和解している。同社はこの過去の件に関するコメントの要請には応じなかった。 AP通信の取材に応じた20代後半から50代前半の労働者5人は全員、今年に入って正当な理由なく解雇されたと話す。そのうちの1人は、ケニアの家族のもとから戻ったところ、職も住む場所も失っていたという。 5人のうち4人は熟練の電気技師であり、そのうちのインド人労働者の履歴書には、ペルシャ湾岸諸国の他社で10年以上の経験を積んだ実績が記されていた。このインド人労働者は、月給2500ユーロ(約3,000ドル/約45万円)を約束されていたが、実際の給与明細に記載されていた支給額は月約500ユーロ(580ドル未満/約8万7000円未満)だった。明細に記された時給は1.55ユーロ(1.80ドル/約270円)だった。 ケニア人労働者らは、捜査が行われていることを知って当局に連絡を取ったという。1人は「私は正義を信じている。現場の労働者たちも恐れずに声を上げるべきだ」と語った。 現在、2人は公園での野宿を余儀なくされており、1人は友人の家に身を寄せている。また、別の1人は他国にあるキャデル社の現場での仕事を打診されたが、ミラノでの仕打ちを受けて辞退したという。 キャデル社は、1998年のタンザニアとケニアの米大使館爆破事件(250人以上が死亡)を受け、国務省が大規模なセキュリティ強化に乗り出した際、米外交公館建設のリーディングカンパニーへと成長した。 同社は2023年の創立40周年のウェブサイトで、「外交施設プロジェクトに必要な厳しいセキュリティ要件を満たし、入札に参加できる建設業者はごくわずかである」と誇示していた。当時、同社の大使館関連のポートフォリオは39プロジェクト、総額74億ドル(約1兆1100億円)にのぼり、その後さらに4つのプロジェクトが追加されている。 ミラノ領事館のキャンパスは、射撃場跡地である約4万平方メートルの敷地に建設中である。現在の米国総領事館は、イタリアの著名な建築家ジオ・ポンティが設計した高層ビル内にある。 国務省の計画によると、新キャンパスの建設には約500人の「現地雇用労働者」が投入される予定だった。プロジェクトには、築100年の建造物の修復のほか、5階建ての領事館ビルの新築、庭園の復元、リフレクティング・プール、大規模な屋外集会エリアの整備などが含まれている。 現在、工事は裁判所の監督下で継続されている。労働者からの宿舎代や食費の差し引きは廃止され、労働時間は週45時間に制限され、週2日の休日が保証されている。 労働者が提示した給与明細には、住居費として月510ユーロ(約590ドル/約8万8500円)、食費として月300ユーロ(約350ドル/約5万2500円)以上の請求とみられる控除が記録されていた。しかし、これらの差し引き額を合わせても、約束された賃金と実際の支給額との間の大きな開きの一部しか説明がつかない。 建設労働者を支援する労働組合代表ラウラ・マルグッツィ氏は、労働者がこれまでの「懸命な働きと献身」に見合うだけの未払い賃金を回収できるよう、損害賠償を求める意向を示した。 マルグッツィ氏は、労働者が提示した給与明細に労働搾取の証拠とみられる内容がそのまま記録されていたことに驚きを隠さなかった。組合の専門家は現在も書類の精査を続けているが、イタリアの基準に準拠していないため、その出所を特定するまでには至っていない。 ケニア人労働者らは、失業率が深刻なナイロビでは、月給200ドル(約3万円)という条件を不本意ながらも受け入れていた。しかし、ヨーロッパで活動する米国企業に対しては、それ以上の待遇を期待していたと無念さをにじませた。 (日本語翻訳・編集 アフロ)

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