東京都渋谷区のバーで客に対し不当に高額な料金の支払いを求めたとして、警視庁保安課は15日までに、都ぼったくり防止条例違反の疑いで、佐古壮汰容疑者(22)ら男女3人を逮捕した。障がい者向けを含む複数のマッチングアプリを悪用し、知り合った男性を店に誘導する手口で犯行を繰り返していた。 ほかに逮捕されたのは、柴田小太郎容疑者(21)、菅原梨那容疑者(24)。逮捕容疑は今年1月中旬ごろ、渋谷区道玄坂1丁目にあるバーで、当時20代の男性会社員に「飲み放題に含まれない酒を飲んだ」と言い、飲食代金や損害賠償金名目で現金計110万円を支払わせ、ネックレスとバッグ計4点(計約75万円)を購入させるなどした疑い。3人のうち一部は容疑を認めている。 この店を巡っては昨年9月以降から被害相談が相次ぎ、男性54人から8000万円以上を得ていたとみられる。アプリには菅原容疑者が「りさ」「ありさ」などの名前で登録。知り合った男性を店に連れて行き、店員役の佐古、柴田両容疑者と共謀して男性にトランプゲームをさせて酒を注文し支払いを強要。その後、現金自動預払機(ATM)で現金を引き出させるというのが常とう手段だった。 被害相談の中には、障がい者向けのマッチングアプリが使われた事案も複数あった。捜査関係者によると「視覚障がいのある人には店の伝票の確認もさせず、一晩で70万円近い金を支払わせていたとみられる。実に卑劣な犯行」と憤った。ほかにも足に障がいのある男性を監禁し無理やり消費者金融から金を借りさせて支払わせることもあったという。同課が関連を調べている。 3人はバーの営業時間外に店舗を間借りし、店名を「クイーン」「キング」「ジョーカー」などに変えてぼったくり行為を繰り返していたとされる。警視庁は匿名・流動型犯罪グループ(匿流)による犯行とみて捜査を進めている。 ≪「狡猾で実に悪質」元警視庁刑事が指摘≫ 元警視庁刑事の吉川祐二氏は障がい者を狙ったぼったくり事件について、「身体が不自由で抵抗できないこと、また傾向的に散財をされている方が少なくお金を持っている人が多い。だから狙ったのでは。狡猾(こうかつ)で実に悪質」と指摘した。 ぼったくりはバブル期終わりの90年代前半から社会問題化。路上で安い金額を提示して客引きし、別料金を次々と上乗せして、結果的に高額になる手法が一般的だった。その後、新宿などの繁華街では女性が“ナンパ待ち”をして「知っている店があるので」と自分の店に引き込む手法が多く見られたという。しかし、最近はアプリやSNSで関係性を築いて店に誘導するケースが常態化しており、吉川氏は「お店を選ぶ段階で不自然さを感じたら疑ったほうがいい」と警戒を促していた。